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人生を駆ける。旧車と生きる vol.4

第53回  BMWオーナー探訪/ハロービーマーズ Hello,Beemers

どうやったら愛車と仲良くなれるのか。自然体で旧車と付き合うビーマー

text / Ryo Tsuchiyama photo / Kaku Hirashima 撮影協力 / マックスフリッツ葛飾本店


今年100周年を迎えるBMWモトラッドの輝かしい歴史において、欠くことのできない名車中の名車がR69Sだ。そんな名車を愛機とするのが今回の主役、佐田やすよさんだ。

佐田やすよ さん
旧 型 V e s p a か ら バ イク ラ イ フ を ス タートした佐田さん。デザイン系専 門 学 校 を 卒 業 後 、空 間 デ ザ イ ン に 関するクリエイティブワークに事していたが、好きが高じてマックスフリッツ東京ベイ店を立ち上げ。そ の 後 、マックスフリッツ葛飾本店オープンを機に同店の店長に。
店 長 業 務 の 傍らで W e b 周りの クリエイティブワークも 手 掛 ける 佐 田さ ん。右はスタッフの中山一葉さん。彼女もスポーツ系250ccモデルに乗 るバイク乗り。和気あいあいと仕事をする2人の姿にほっこり。
クラシックBMWの中でもマニア垂涎のモデルR69S。世界的に見ても女性オーナーはかなり少ないだろう。車両はオリジナルのスタイルをキープしている。
ライディングギアのすべてが揃うマック
スフリッツ。他の追随を許さないレディー
スアイテムの豊富さも人気の理由。

『ローマの休日』に憧れた高校時代 行き着いたのはやっぱりクラシック

クラシックとモダンが同居する洗練されたライディングギアで全国のライダーから厚い支持を集めるマックスフリッツ。その
ヘッドショップとなる葛飾本店で名物店長として慕われるのが佐田さんだ。本誌●R69Sといえば、クラシックBMWの中でも特に人気が高いモデルですよね。元々古いバイクに興味があったんでしょうか?佐田●じつを言うと高校生の頃から映画『ローマの休日』に出てくるベスパが好きだったり、ジャガーのEタイプ、ライカのクラシックカメラなど、古い工業製品にすごく興味があったんですよ。本誌●女子高生でそういったモノに興味を持つ人はなかなかいませんよね?(笑)佐田●そうですね、周りにそういう話ができる子もいませんでしたし、昔から男性が興味を持つようなものに惹かれる部分があったかもしれません(笑)。本誌●では実際にバイクに乗り始めたのはいつ頃なんでしょうか?佐田●31歳ごろに、当時の勤務先から子供の学童保育の送り迎えをするためにベスパ150を買って。そこからですね。本誌●えっ。佐田さんのベスパ(本店のショールームに飾っている白いベスパ)は、かなりマニア向けの60年代のビンテージモデルよね? これでお子さんの送り迎えをされていたんですか?佐田●そう、ランドセルを背負った子供と一緒にベスパで走っていました。古いのでウインカーもついていないから息子に手信号をやらせたり(笑)。やっぱりベスパが憧れで、そのために免許を取ったほどです。ベスパを手に入れて1年ほどしてヤマハSR400を増車。そこからカスタムにハマって、SRはアルミタンクに交換したり、オレンジにペイントしたりフルカスタム状態に。その頃にアメブロで「らいおんまる」というHNでブログを始めてSRについて発信していたんです。マックスフリッツの佐藤さんに出会ったのもちょうどその頃で。ファッションが大好きなのにピンとくるウエアがなくて困っていた私にとって「こんなかっこバイクウエアがあるんだ!」って衝撃を受けて。本誌●その後、ご自身で起業されて市川にマックスフリッツのお店をオープンされたんですよね?佐田●はい。フランチャイズとしてスタートしました。SRに乗ってなかったらマックスフリッツとも出会っていなかったでしょうね。本誌●では、初めてのBMWは何だったのでしょう?

晴れてR69Sオーナーになった佐田さん。愛車との対話を楽しむように、天気が良ければ 普段の通勤にもR69Sを使用する。年配の方からよく声をかけられるらしい(笑)。
60年代初頭の個体だというR69S。佐田さんは2代 前のオーナーが所有していた頃からこの車両の存 在は認識していた。過去にエンジンや車体などの機 関部にはきっちり手が入っていたようで、日々の街乗 りや通勤にもにも問題なく使用できてるそう。
キーをオンにして燃料コックを開ける。その後左右のキャブのティクラーを押し込 んでガソリンをオーバーフローさせてからキックペダルを踏む。そんな一連の「儀式」 も手慣れたもの。

どうやって愛車と仲良くなるかを探る日々

佐田●初めてのBMWは知り合いから譲ってもらった 気筒のF650GSです。当時マックスフリッツのカンボジアツーリングに参加して初めてオフロードを走って、そこからオフやキャンプにも興味が出て。Fは安定感も高くてヒラヒラと走るし、キャンプ場の未舗装路でも怖くないし、BMWのバランスの良さを体感しました。でもそのうちボクサーエンジンに興味が出て、 年ほど前にR1200Rを増車しました。本誌●初ボクサーはどうでした?佐田●最初は不安でしたが、ボクサーの低重心と音と鼓動感に感動。走りのフィーリングが気持ちいいなぁと。本誌●でもそこからさらにR69Sを増車されたんですよね?佐田●はい。今年佐藤さんから譲っていただいて。R69Sのクラシックでヘッドライトやスイッチ、メーター周りの造形などが気に入っている萌えポイントですね。本誌●所有してみてどうですか?佐田●まるでプロペラ飛行機に乗っているみたいな感覚ですごく面白いです!「このまま空を飛ぶのかな?」って思うくらい(笑)。R69Sには比較対象がないくらい独特の乗り味ですね。最初はギアの入りが固かったけど、乗るうちに段々乗りやすくなってきて。先日もR100Sに乗る友人たちと川越までツーリングに行きました。本誌●旧車だとトラブルの不安もあると思いますが……。佐田●佐藤さんやその前のオーナーさんも知っていて、きちんと整備されていたようで大きな故障もありません。最初は好きになれるのか不安でしたが、エンジンの掛け方やアールズフォークの乗り方を探っています。それを少しずつ理解し始めた今は「やっとこの子と仲良くなれているかも!」って実感しているところですね。

一筆御礼

クラシックBMWの王道であり、その頂点とも呼べるR69S。経験豊富なマニアであってもミュンヘナーを所有するには相当の覚悟が必要なはず。しかし、当の佐田さんからは希代の名車を所有するという気負いは良い意味で感じられない。あれこれと知識で武装するよりも、まずはバイクと向き合いながらゆっくりと接し方を探ってゆく。佐田さんがR69Sと紡ぐ物語はまだ始まったばかりなのだ 。

臆さず普段使いするのがR69Sとの付き合い方

千葉の自宅から葛飾の店舗まで雨の日以外はR69Sで通勤するという佐田さん。バイク通勤ができる環境が何より嬉しいという彼女は、半世紀以上前の車両と日々対話しながらライディングを楽しんでいる。

バイクに乗るきっかけとなったベスパ150(通称スタンダード)。60年代前半製のビンテージは20年近く所有!現在も実働状態で葛飾本店のショーウィンドウに展示している。
2、3年前からガレージに加わったR1200R。 最 初 は テ レ レ バ ー の 乗 り 味 に 苦 戦 す る も 、低 重 心 に 起 因 す る 安 定 感 に 驚 い た と い う 。ボ ク サーエンジンを初めて体験した大切な愛車。

唯一無二の世界観が 体感できるヘッドショップ マックスフリッツ葛飾本店

営業時間/ 11時~ 19時 毎週水曜・第2木曜日 東京都葛飾区宝町1-1-21 ☎︎03-5671-6335

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