進化と熟成の正統派
フBMW第1号機・R32の直系というべきロードスターが、R1300Rとなって登場する。水平対向2気筒エンジンとシャフトドライブからなる車体構成はそのままに、102年もの歳月で進化、熟成してきた。BMWの伝統にどのような革新が起きたのか!
Text :Takeshi Yamashita| Photo:BMW Motorrad
BMWBIKES vol.110 掲載記事
従来型や最新RSとも違う正統派ロードスターの進化
ボクサーエンジンの水冷化以降、GSとRTはテレレバー、RSとRはテレスコピックを採用するRシリーズのカテゴライズは、1300になっても同じだ。それゆえ、R1300R最大の特徴は、車体とハンドリングの軽さにある。シンプルに表現すれば、R1300RSとエンジンおよびシャシーを共用するネイキッドバージョンで、車重はRSより7㎏も軽い。差異はリアサスペンションストローク、キャスター角、トレール量、ホイールベースに及び、ロードスターとして最適なディメンションを与えられている。それでいてシート高はRSより5㎜低い785㎜を実現。よりパワフルなエンジンを搭載しつつも、最もフレンドリーなロードスターであることに変わりはない。従来型のR1250Rとの比較でもさらにコンパクト、かつマスの集中化が図られ、市街地走行からツーリング、ワインディングでのスポーツ性まで、走行性能は全面的に高められている。エクステリアはいっそうマッシブになり、ルックスに違わない速さに、安全性と快適性を備える。
ASAも装備可能で豊富な最新電子制御デバイス群
走行モードは『ロード』、『レイン』、『エコ』の3種を標準装備し、オプションで『ダイナミック』と『ダイナミックプロ』、カスタマイズ可能な『ライディングモードプロ』を追加可能だ。急激なエンジンブレーキを制御するMSR、ABSプロとDTCは標準装備される。スプリングレートも自動調整する最新電子制御サスペンションDSA、クラッチ操作不要でシフトチェンジするASA、夜間走行時のコーナリングで死角をなくすアダプティブヘッドライト、周囲の交通状況を判断して速度を自動調整するアクティブクルーズコントロール(ACC)はオプションだ。ドイツ仕様では、ダイナミック、イノベーション、コンフォートのパッケージが用意され、それぞれに最適なオプション装備内容となっているが、日本仕様のパッケージ内容は現段階で未定だ。パニアケースはRSと共通で、集中ロック、庫内照明、USB–Cポートを備え、利便性が大きく向上している。パニアケースの容量は左右それぞれ29ℓ/26ℓだ。オプションのシートは4種で、体格や用途に合わせてカスタマイズできる。すっかり定番となった『オプション719』のビレットパーツの他、エキゾーストやホイール、スポーツブレーキキャリパーなどオプションは豊富だ。
テール/ブレーキランプとウィンカーは別体式を採用。リアフェンダーは短めでコンパクトにまとまっている。電子制御デバイスをフル装備する車両の左コンビネーションスイッチは、R1300シリーズ共通パーツ。ハザードスイッチの左にあるのはマルチロッカースイッチで、たとえばDTCなど好みの機能を割り当てると、メニューボタンやマルチコントローラーを複数回操作しなくても、このスイッチ操作だけで機能設定にアクセスできる。『オプション719キラウエア』には、バーエンドミラーが装着される。もちろんバーエンドミラー単体でもオプションとして用意されている。DSAを選択するとリアサスペンションはスポーツタイプとなり、非装着車よりもバンク角が増え、ロードインフォメーションも豊かになる。ストローク量は140㎜だ。ダイナミックパッケージなどに装着されるステップキットは4種から好みのポジションを選択可能。ペグ上面は前方に傾斜しており、スポーティなライディングポジションを作り出す。各パーツは切削アルミで質感にも優れる。同パッケージには制動性を向上したスポーツブレーキキャリパーも含まれる。
エンジン型式 | 空油冷水平対向2気筒 |
排気量 | 1300cc |
最高出力 | 146ps/7750rpm |
最大トルク | 15.2kg-m/6500rpm |
ホイール径 | F:17/R:17 |
全長/全幅(mm) | NA/846 |
ホイールベース | 1503mm |
サスペンションストローク | F:140 mm/R:130 mm |
シート高 | 785mm |
車重(※) | 239kg |