TOURING

ツーリング

NORTH ISLAND RALLY

BMWBIKES vol.91 掲載記事

日時 / 2020年7月23日~26日
Text / Tsutomu Matsui
Photo / Tsutomu Matsui、BMWBIKES編集部
取材協力 / reinforcement.jp、www.bmw-motorrad.jp/ja/home.html#/filter-all、www.tras.co.jp/introduction.html、www.metzeler.com/ja-jp/home

冒険の旅
-番外編-

the 3rd. edition of adventure trip to far east Asia

NORTH ISLAND RALLY

北緯42度線に集合せよ!
4日間、1500kmのラリー放浪記

コマ図で探訪する北海道
風景、林道、移動感、その見聞録

なぜラリー? なぜ北海道? 「冒険の旅」仲間がなぜそこにむかったのか。その答えは簡単。
GSならイケる。そう思ったからである。1週間、3000㎞超の旅が始まる。

Team BMW BIKES「冒険の旅」
ロードブックラリーに大遠征

GSなら自走範囲内
時代にも対応!?

 チン!(スマホの着信音)。画面に出たサマリーに「行きませんか?」とある。ナニに? 5月20日、夜21時前、そんなカタチで北海道計画が転がりだした。

 これ出ませんか? と、ある本文のリンクにはノースアイランドラリー(以下NIR)と。北海道を舞台に7月23日~26日の4日間、毎日300から450㎞ほどを走るのだという。競技ではなく1500㎞の冒険ツーリングだ、と。

 ロードブックを使いスタートからの距離と概念図で記された方向転換地点のコマ図を読み解きながら進む。「T字路右」とか「橋を直進」「ここからダート路」等々、そこに記されたものが道標になる。

「いっしょに行きましょうよ。僕は絶対に行きます」

 今年、R1250GSから1250GSアドベンチャーに乗り換えたメールの主、新田正直さんのウズウズが手に取るように伝わってきた。そして飛行機+陸送便を使った場合、フェリーを使った場合、数々の現地入りシミュレーションが続けて入電。本気だわ……。

 結局、自走で行き自走で戻るとプランが現実的に時間、コスト含め、コロナ時代に密をコントロールしやすいね、となり、スタート地点まで自走、終わったら自走で戻る、という外枠ができた。そうしたら急に行く気が満ちてくる。 「次号でやらない?」と編集長に展開すれば「オレも行きます!」「エントリーしちゃいました!」 結局、冒険の旅に協力いただいている新田さん、篠原祐二さん、櫻井編集長、そして私に、顧客サポートで参加もする原 豪志さんの5名が現地で集うことに。

ルートの途中、北海道コレクションとも言える直線道路はあちこちに点在した。八戸~大間の風景にも北海道的なものもあったが、本場はやはりデカイ! 物言わぬコマ図が見せる想像以上の風景。ラリーの魅力だ。
NIRは朝のスタート前にその日のブリーフィングが行なわれる。注意事項の伝達などが主。このときはどこか緊張感がある。
スタート地点となったルスツリゾートのパーキングに集まった参加車両たち。
往路、二日目、函館に渡るフェリーへの乗船地近く、大間崎にて。

NIRの朝、その日のマップを巻き付ける新田さん。電動のそれはラリーでファクトリーチームも使うもの。

長い距離を走る、ということ。
GSはやっぱり旅のワークスマシンだ。

初日の終盤、280km地点付近で現れた風景。その日のゴールまで30kmほど。時間も充分あるので、思わず風景を見ながら「この風景は今日のご褒美だね」と話が弾む。手前にあったダートの下りは砂利が深く肝を冷やしたのもいい思い出だ。

2日目、315.72km地点から始まる宗谷丘陵のダート。オホーツク海を見下ろす素晴らしい場所。当日はあいにくの空模様だった。

NIR3日目、11.64km地点から10km続いた土手上のダート。素晴らしかった。

林道の途中、伐採された場所に出た。それまで森の中のトンネルを走るようだった風景が一転、広々としたものに変わる。無表情なコマ図が「どうだい!」と雄弁に語りだす瞬間だ。

道が奏でる風景を聴き
GSの走りで安らぐ

 エントリー後も「タイヤはどうする?」「荷物をソフトパニアで運んだらどうだろうか?」「ナビアイテムはどうすればいい?」

 ロードブックラリー・フレッシュマンの新田さんは矢継ぎ早に質問を投げた。往復+現地1500kmならば、ライフに長けたブリヂストンAX41、ミシュランのアナキーワイルド、メッツラーのカルー3だと奨めた。僕は今回、メッツラーカルー3を。新田さん、原さんはミシュランをチョイス。編集長はブリヂストンを選んだ。篠原さんは、テストで履いたエンデューロタイヤだった。

 そしてアルミパニアケースよりもソフトケースのほうが軽快に林道を走れるのではないか、試してみましょうよという提案で、あれこれソフトパニア選びが始まる。ノーマルのパニアステーにポン着けできる、防水性、タフさなどから品定めするが、なかなか100点満点が出ない。そんなある時、灯台下暗し、純正でありました、と新田さんからメールが。ならばそれで。品質、装着精度、純正は基準が高い。

 ナビはラリー経験豊富な篠原さんのショップ、リーンフォースメントにてICOのトリップメーターとミグテック製マップホルダーを購入、インストールまでお願いした。ノーマルでは純正ナビホルダーを取り付けるアーチにナビアイテムを装着。しっかりノーマルのアーチを補強するのもラリーを知り尽くした篠原さんならでは。

 ナビアイテムの搭載に合わせて新田さんがオリジナルのスクリーン周りを新造。見た目はまるで旅するファクトリーバイクと化したGSになったのである。

 ラリーは旅。その成否を決めるのは事前準備次第だ。あとは必要になる工具やエマージェンシーブランケット、それに携帯食……。

 新田さんと私は7月21日に出発。初日は八戸泊。22日は大間崎まで青森を堪能し、函館から洞爺湖温泉へ。そこで篠原さんと合流。翌朝、いよいよNIRが始まる。

ナビゲーション、って?

ルートブックはA5サイズのペラを連続でロール状にしたもの。それを納めるホルダーは手動、電動、手作り、クリップで挟むなど参加者それぞれ。今回、新田、櫻井、松井はミグテック製電動マップホルダー+ICO GPSトリップを使った。

コマ図の読み方は?

ICOトリップが示す45.56kmはその日のスタートからの距離。コマ図はダート路が舗装になるコト、進行方位は234度(南西)。トグルスイッチでマップのロールを送る。

GSで走ると楽しいことしかない。
あらためて驚くその奥深い遊び力。

舗装路、林道走行があるNIRではパニアよりも慣性マスを減らしたい、自走で荷物があり途中離脱もありえるから積載キャパは必要。その答えがアタカマサイドバッグセットだった。左35ℓ、右25ℓ、各10kgを許容する。

ロードブックには給油箇所の記載もある。アドベンチャーは最長480.13kmのDAY3も無給油でラクラク走破。ダートではキッチリオフ車として走るGSは本当に楽しい。通過、ではなく心底楽しめるポテンシャルだから支持されるのだ。

ラリー3日目、稚内を出た我々は夏空のもと南下する。出発時14度だった気温は次第にあがり汗ばむほどに。風景同様ダイナミックな北海道を堪能。自宅から5日目2000km以上を走った新田さんと私は疲れを感じることなく走る。これ、まさにGSの真骨頂だ。

グリップヒーターが
マストなワケ

 7月23日、ルスツリゾートには61台もの2輪参加車両が集まった。その台数の内訳はハスクバーナモーターサイクルズ(12)、KTM(10)、ホンダとヤマハ(6)、そしてベータとエイジアンウイング(各1)。そしてBMWモトラッド軍団が25台と圧倒的多数を占めた。GS、HP2エンデューロ、HPNを含むが、旅力、走り、遊び力を、各種イベントでの体験、販売店の努力がもたらした一つの成果だと思う。

 初日、ルスツリゾートをスタートしたNIRは、周辺の林道を経由して小樽へと向かった。その後、札幌を高速道路で迂回し、滝川から再び一般道の移動を続け、道ばたに直径1mはありそうなふきの葉が揺れるダートを行く。雨の恩恵で、埃がなく気温も快適。

旭川まで314・63㎞を走破。

 二日目は355・18㎞のステージだ。ホテルからスタート地点の当麻鍾乳洞に移動する。そこまでロードブックはなく、緯度経度を純正ナビに入れ向かった。

 リスタートとなるそこから3㎞も走らず当麻の深い森の中へ未知が入る。濡れた黒土の道、落ち葉、分岐の多さと草が深く見分けにくいなど冒険度が少し高い。一人で迷うと脱出に時間がかかるから、自信の無い人は誰かと走って、とオーガナイズが言うのが解る。3年前に走ったエリアだが、2度目も土地勘ならぬ道勘は活きなかった。

 NIRはタイム競技ではないものの、ロードブックをフォローした証しとしてWP(ウエイポイント)が設定されていて、その場所にある看板の文字など、スタート時に渡されるチェックカードに記す、というタスクが与えられている。途中チェックポイントも設営され、開設時間内に通過をすれば減点ナシ、ゴールへは締め切り時間前に到着したか、など採点される。参加者はこのルールを含め楽しんだ。

 チーム冒険の旅は、篠原さん先頭、松井が最後尾の体制で進んだ。二日目は宗谷岬経由稚内へ。気温が低い道北では、グリップヒーターが嬉しい。日本は広い。その夜、稚内の寿司は旨かった。

ラリーカスタムの内容

BMW Motorrad 純正
アタカマサイドバッグセット

左右セットでの価格は16万8630円。パニアフレームに装着する樹脂アダプターで着脱簡単、落下の不安ナシ。取り外し式防水インナーも◎。「ファンクションリュック」23900円は車載用ベルト付き。賢い!

Tras×REANFORCEMENT
オリジナルスクリーン

水冷R1250GS系用に作られたオリジナルスクリーン。ナビアイテムをスタンディング中に確認できる角度に搭載するための二重構造。カーボン製ベースと市販スクリーンを使う。試作で価格未定。

自宅→自宅の過程でラリーを楽しむ。
GSはやっぱりスゴイ、を再認識。

DAY4、187.05㎞、コマ図に「緑のトンネル」とあった。まさにその通り。千歳にある原生林の中を貫く道。地元の人も活用する活きたダート路。入り口には熊注意の看板も。アップダウンがほぼない平坦路。しかしダートというのが不思議な印象だ。深い森の中、GSは滑るように進む。途中、清流で釣り人もいた。

DAY2、87.26km地点、犬牛別川にある貯水池の橋で一休み。道道251号は印象深い。
DAY4、30.52km地点、占冠で一息。篠原さんオススメの逸品をいただく。

完走は次へのスタート。
新たな冒険の旅、始まる?!

 第三回目となるNIR。このイベント、2014年、2015年と稚内スタート、国際フェリーでロシア、サハリン島へと渡り、2国間で行なわれた国際ラリーが発祥だ。当時もツーリング色が強く人気があった。しかし国際フェリーを運航するハートランドフェリーが航路から撤退。残念ながらそのルートでの再開はされていない。

 2013年には本誌でもリポートした「クロス・ザ・ボーダーツアー」としてサハリンを訪れた。稚内から5時間で海外だったのだ。その再開を祈念してスタッフが道内で開催したのが今回だ。ツアー会社もラリーを支えたロシアに強い札幌のノマド。2度、サハリンに行った私も懐かしい顔に再会できた。

 冒険ラリーはそんな意味で旅の要素を多く含んでいる。競技の側面が強いラリーがそうではない、とは言わないが、ロードブックが誘うラリーの面白さは旅感でもあり、未知への場所で勘を効かせるゾーンに入ることを求めてくる。

NIR3日目。晴れたが肌寒い稚内を後にして今回最長の480㎞先のゴールに向かう。途中、自動車道を50㎞ほど走るが、一般道の移動が大半。途中、写真を撮りながらの我がチームは時短のため、ランチはセイコーマートでクイックチャージすることに。

 電動マップホルダーとトリップでのナビゲーションにも慣れた新田さんは余裕の笑顔。R1250GSからアドベンチャーへと乗り換え、重く大きいはずなのにトルク特性がマイルドに感じることで扱いやすいと意思疎通も醸成されている。30ℓタンクと北海道での好燃費が重なり、この日終了目前の給油所でまだ180㎞も走行可能だった。

 この日、層雲峡を通過し南下して着いたのは十勝。終盤までダートがあり雨で盛大に汚れたが、給油、洗車まで済ませてゴール出来た。

 最終日、4日目。304㎞のルートをたどる。コマ図をめくる度に終わりが近づくのがさみしい。それでも北海道の王道ルートと裏道ルートを交えてこれほど楽しい移動ができるとは。ラリーのゴールはルスツリゾートのスキー場の頂上だった。15時のゴールタイムギリギリになったが、素晴らしい体験と風景のラリーは終わった。翌日、小樽~新潟のフェリーに飛び乗り、家路へ。長い旅が終わった。

 チン! スマホに着信。新田さんだ。まだ先ですけど……。終わりは新たな始まりの格言通り、また別の冒険が始まる予感なのだ。

7月26日、終了後に行なわれた表彰式とBBQパーティー。充実感と達成感。でも脱力感はなし。まだ帰路がある。明日もGSで走る!という悦びがあるからだ。

留寿都の町を見下ろす絶景ポイントがゴールだった。ラリー初体験の新田さんはみるみるたくましくなり、チーム冒険の旅はまた新たなトビラを開いたのでした。