BMWBIKES vol.88 掲載記事
Text & Photo / BMWBIKES編集部
BMW Motorrad Club Japanのヨーロッパ
ツアー下見ツーリングに編集部が参加。
BMW Motorradの本場ドイツやスイス
イタリアをめぐる旅の中で
本誌編集長・櫻井がみたものとは。
今回、一緒に走ったのは……
のスタッフの皆さん
BMCJはBMWのオーナーズクラブとして、ドイツのBMW本社からもその存在と活動が評価されているクラブで、現在も日本全国に1000人以上の会員が在籍。今回は並河会長とスタッフ一同が同行した。
「ドイツとスイス、イタリア辺りを走るんだけど一緒に来ない?」BMCJ(BMW Motorrad Club Japan)の並河会長からお誘いを受けたのは今年の8月ごろ。なんでも将来的にクラブでヨーロッパツアーを実施するためにドイツ、スイス、イタリアを実際に走って下見するという。
なかなかBMWの本場であるヨーロッパを走る機会なんてないので、二つ返事でついていくことにした。
バイクはミュンヘンのディーラーでレンタルする。用意されたのはR1250GSが3台とF700GSが3台だ。
日本から持ち込んだウエアを着てミュンヘンの雑踏へ。久々の右側通行に最初は戸惑うが、そこは交通先進国。皆運転マナーがよく、譲り合いの雰囲気が色濃い。慣れれば日本よりも走りやすいかも。
走り出してほどなくフリーウェイに乗ると、誰ともなく豪快にアクセルを開け始めた。おいおい大丈夫なのか? と不安に思ったがそこはいわゆる制限速度のないアウトバーンだった。普段、日本では絶対に出せないような速度域にビビりつつも、うなるGSのエンジンに快感を覚える自分がいた。
今回のざっくりとしたルートは、ミュンヘンから南西へ向かい、オーストリア、スイスを越えてイタリアのミラノへ。今度は北東へ上がって、ドロミティ山脈をかすめて再びミュンヘンに戻るサークルルートだ。走行日数は3泊4日でおよそ1200kmを走る。
初日はミュンヘンを出てチューリッヒの南のルツェン泊。2日目はアルプス山脈に近づくにつれ、気温が下がる。しかし全長17kmに及ぶゴッタルドトンネルでアルプスを抜けてしまえば、もうイタリアはすぐ。
南下するにつれ気温はどんどん上がり、ミラノに着いた頃にはラリースーツでは汗だくだ。ドゥオーモ(教会)を見て、本場のティラミスを楽しんだら、その日はコモ湖のほとりの歴史あるホテルに投宿。
最終日は、北東へ走りいよいよドロミティ山脈の西の端へ上るわけだが、ここがこの旅のハイライトだった。フリーウェイでドロミティの麓に着くと、見たこともないような岩山があちらこちらに現れ、その中に縦横に走るワインディングをGSで攻める。
山岳地帯の内部へと飛び込めば、まるで「剣山」のような険峻な山々が僕らを迎えた。その中の一つ、ローゼンカルテン山脈の麓にあるカフェに立ち寄ったときは、もう本当に心底、その雄大さにやられた。その岩山の風景はこの世のものとは思えないほど美しく光り輝いており、下界とは明らかに違うのんびりとした時間が流れていて「本当にここは天国じゃないか?」とさえ錯覚するほどに素晴らしい場所だった。
広大なヨーロッパの中の1200kmなど、ほぼ何も見ていないも同然の距離だ。しかしその短い中でも見えてきたのは、やはりBMWのオートバイというのは、こういった旅をすることで真価を発揮するということだ。
あらゆる電子制御や機能が、迫りくる様々な路面や気候に対応し、最終的にライダーを無事に目的地へと到達させる。僕は日本で同じGSに乗っているが、あきらかにヨーロッパのGSのほうが、生き生きと走っているように思えた。そんなジェラシーを抱え僕は帰国の途に就いたのだった。