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“もて耐”への挑戦③

BMWBIKES vol.96 掲載記事

Text / Eri Ito
Photo / Jun Goto、ピレリジャパン、Eri Ito

Special thanks / ピレリジャパン
BMW Motorrad世田谷店

BMWBIKES & Frau MS

2021年もてぎ7時間耐久
ロードレース“もて耐”への挑戦

「すべては笑顔で7時間後の
チェッカーを受けるために」

ベテラン&ビギナーライダーの
コンビネーションチームが再集結

レース経験豊富なライダー2人と
昨年からレース参戦をスタートさせた
ライダー2人という4人で挑んだ
2021年のもて耐。

各々もて耐に向けて準備を進め
2年目のチャレンジに意欲を燃やした。

4人のライダーで7時間を走る決勝レースを
果たして完走できたのか?
最後に私たちが浮かべた表情とは……。

もて耐がなかったら
私たちはきっと出会っていなかった

レースがつないだ縁とともに
チェッカーへ向かっていく

もて耐のスタートは鈴鹿8耐同様のル・マン式。ライダーがバイクに駆け寄ってバイクを発進させる瞬間、エキゾーストノートがサーキットに響き渡る。エキサイティングなシーンだ。

第1ライダー 坪井千春

スタートライダーを務めた坪井さん。常に笑顔の坪井さんもスタート前は緊張した面持ちだったが、さすが経験豊富なベテランライダー、難しいスタートを見事に決めた。

第2ライダー 小林ゆき

レース終盤にセーフティカーが入ったことで作戦変更。ピットインせずにバイクをフィニッシュラインに運んだ。チーム内随一のレース経験を持つゆきさんだからこそできた判断。

第3ライダー 伊藤英里

今年、チーム内で最もタイムが伸び悩み、迷走していた私。決勝レースでやっと自己ベストを更新した。他ライダーをパスすることはできなかったが、レースの厳しさだけではなく、楽しさを実感。

第4ライダー 並河真奈

著しい成長を見せている並河さんは、もて耐でもペースをキープする安定した走り。軽い転倒こそあったものの、その後の走りに  影響を感じさせず、メンタルの強さも見せた。

 第4ライダーは並河さん。ところが、ここでアクシデントの発生である。ライダー交代の時間になっても並河さんが戻ってこない。「まさか、転倒? それともガス欠?」ピットは緊張に包まれた。

 その後ピットイン予定時間から遅れて並河さんが戻ってきた。5コーナー進入でシフトダウンがうまくいかず、アウト側のグラベルに突っ込んでしまったのだとか。

 幸い、ハイスピードでの転倒ではなく、並河さんに怪我はなかった。ほっと胸をなでおろす。バイクも右のレバーガードが曲がってサイドカウルが傷ついた程度。すぐに修復されて15分遅れで坪井さんがコースインしていった。

 レースではバイクの整備、修復をしてくれるメカニックや、ピットインするバイクを支えたり、給油したりとサポートしてくれるメンバーがいる。滞りなくレースを戦うことができるのは、支えてくれる仲間がいるからこそ。

 レース中にふとピットを見回して、「きっともて耐がなかったら、出会っていなかった人もいるんだろうな」なんて思う。年齢も、職業も違う、そんなメンバーが「もて耐完走」のために一丸となって協力し合い、支え合っていた。

レースにハプニングはつきもの。並河さんが5コーナーでまさかの転倒……! ライダーは無事で、一安心。低速での転倒だったためバイクの損傷も激しいものではなく、すぐに修復されてレース続行となった。
レース中も監督として走行順を確認する坪井さん。ライダーとして、監督として奔走し、チームを引っ張っていた。もて耐は7時間の長丁場。適宜、走行時間や走行順などの微調整が必要なのだ。
「どうだった?」「こうして抜いてさあ……」とレース中の話に花を咲かせる。自分が走っていないときは比較的リラックスしていて、わいわいと雑談していた。こういう雑談も楽しかったりする。
真夏の高い気温で行われるレースはどんどん体力を消耗するので、ごはんもしっかり食べる! 自分のペースを崩さずに、けれど体調を最後までキープするよう考えて7時間を過ごす。
土曜日に行われた3時間耐久を戦った仲間のチームのライダーが、私たちのレースをサポートしてくれた。レースはチーム戦。ライダーだけではなく、みんなで戦っている。だからこそ面白い。
ゆきさんの走行後、私がチェッカーライダーとして交代する予定だった。しかし、残り時間25分で転倒発生によりセーフティカーが導入。ガソリン残量を計算し、ゆきさんがそのままフィニッシュ。

7時間完走!!

スタートから7時間後、ピットウォールに駆け寄って、坪井さんや並河さんとともにチェッカーを受けるゆきさんを迎えた。2020年から始まった挑戦を完遂した瞬間だった。安堵感が一気にこみ上げ、ついつい涙が出てしまった私。あまりにも情けないライダーだったという反省もあるが、なによりもチームメイトがいたから頑張れた。

あわやガス欠を救った
レース終盤の決断

最後まで何が起こるかわからないのがレースというものである。レース終盤、ゆきさんの走行中に転倒が発生。コース上にバイクが残ったことでフルコースコーションとなり、セーフティカーが導入されたのだ。

 セーフティカーはチェッカーまで残り時間10分ほどというところで解除された。本来は私が最後のライダーとして走り切る予定だったのだが、豊富なレース経験を持つゆきさんはセーフティカー中に「ピットインすれば給油が必要。

 それはもったいない」と英断。チェッカーを目指し、燃費走行に切り替えた。ゆきさんによれば、セーフティカーが入ったとき、すでに残り走行可能距離がぎりぎりだったのだそうだ。一方、ピットで待つ私たちも「ゆきさんはこのままフィニッシュするつもりだろう」と見守っていた。

 16時30分、ゆきさんが駆るG310Rがフィニッシュラインを駆け抜ける。私たちは笑顔で、ピットウォールから手を振る。7時間完走、総合70位。すべてが終わったあと、西日が静かなコースを照らす。その光が目に染みるほど、まぶしかった。

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