IMPRESSION

インプレッション

進撃のFシリーズ

BMWBIKES vol.89 掲載記事

Text / Daigoro Suzuki
Photo / BMW Motorrad

軽快でアグレッシブ
誰もが乗りこなす快感を!

BMWBIKES
NEWMODEL IMPRESSION

昨年のEICMAで発表された
2台のFシリーズ。
シンプルなロードスターモデル
である「R」と
アップライトでカウル着きの「XR」。
2020年1月にスペインで行なわれた
試乗会の模様をさっそくお届けしよう。


850をベースに
熟成された車体

 Fシリーズの新しい幕開けは、F750&850のGSシリーズによってもたらされた。並列ツインというエンジン系式は変わらないものの、中身は全て刷新され、全く異なるキャラクターに変貌を遂げた。

 一方、ロードスポーツモデルであるRモデルはお預け状態が続いていたのであるが、遂に新型が登場。スペイン・アルメリアにて試乗会が行なわれた。

 さらに新たなトピックとしてXRというニューモデルが加わりこの激戦区に立ち向かうモトラッドの並々ならぬ意欲を感じたのだった。

 8時といってもまだ薄暗いなか、セルボタンを押してエンジンをスタート。非常に短くスタイリッシュなサイレンサーからは蒸気の混じった白い排気ガスが盛大に放出されている。

 メーターに表示された外気温はまだ6度。3段階の調整を持つグリップヒーターを最強にセットし走行を開始した。

 大きな括りでいえばF-GSの兄弟車であるわけだが、当然そのキャラクターは全く異なる。

鈴木大五郎

Daigoro Suzuki

オンロードからオフロードまで幅広いインプレッションが人気の2輪ジャーナリスト。BMW公認のインストラクターでもあり、自身が主催するbkライディングクールはじめ、数々のスクールで講師を務める。

F900R

F-GSと同骨格とは思えない
アグレッシブなロードスター

The dynamic roadster
    for purist riding fun.

強い前傾ではないライポジであるが、コーナーではスッとフロントに荷重が乗せられ、旋回力を生み出していける設定。燃料タンク位置がシート下からエンジン上に変更となった効果もありそうだ。

わずかな排気量アップだが
パワフルかつトルクフル

 最初に感じるのはエンジンのパワー感。トルクが増していて、ダイレクトだ。もちろん、エンジンの排気量アップによるものが大きいと思われるが、サスペンションストロークが短いことによる動力伝達のリニアさも一因だ。

 F800Rまで採用されていた旧型は360度クランクを持ち、ボクサーエンジンのような吹け上がりとサウンドを持っていたが、こちらは90度Vツイン的フィーリングとなる270度クランクを採用している。360度クランクの、牧歌的とも形容されるノホホンとしたフィーリングも悪くなかった。F750&850GS登場の際には、その新たな息吹を感じさせ、それが確実に性能アップを果たしているのがわかりつつも、複雑な心境があったのも確かである。それはまるでボクサーエンジンが水冷となった当時、空冷を懐かしむかのような……。

 しかし、900となったRに乗った今、従来モデルを懐かしむ機会はほとんど訪れなかった。いつのまにか水冷一択と市場の声も変化していった状況にも似ている。それほどまでに、新型は素晴しく、そしてF-GSのエンジンよりもあきらかにトルクフルかつパワフル。

 一方、メインフレーム、そしてスイングアームをGS系と共通化した構造はなかなかに荒っぽい手法だ。コスト重視の小排気量モデルでは常套手段であるが、ある程度大型の、しかもしっかり性能を追求したマシンとしては珍しい。10年ほど前から模索をし、今回どちらのシチュエーションにも違和感のないバランスを得たとのこと。

 確かに、オフロードでもロードでも極限を追求すれば妥協点が感じられるのかもしれないが、正直ネガを発見することは出来なかったのである。

メインフレームとスイングアームはF750&850GSと共通で、すべてのFシリーズが同じものを使用。ボルトオンでマウントされるリアフレームはR/XRオリジナル。

ヘッドライトのデザインに凝るのが最近の欧州ブランドのトレンド。デイタイムライディングライトが国内で使えないのが残念である。

Rモデル共通の、フロントにボリュームがあり、リヤがコンパクトというデザインを踏襲していることがわかる。サイレンサーの短さが特徴的だ。

リーンウィズでも良く曲がるが、ペースが上がった場面ではちょっとイン側に腰をずらすとさらに旋回性を引き出せる。スムーズに移行できるポジションだ。

アダプティブコーナーリングライトを両モデルに装備(ベースモデルを除く)。センターに常時光るデイタイムライディングライトがマシンの個性を引き立たせるだけに、日本市場での法規による未採用は残念である。

F900XR

軽さと乗りやすさが際立つ
究極のオールマイティ

A genuine “XR”
     for the mid-range.

 優雅なランチブレイクをはさんで、今度はXRに乗り込んで走行する。

 ライディングポジションが大きく異なるのは当然のことだが、同じであるはずのエンジンフィーリングも異なるように感じられる。重さや足周りの設定からなのか、Rよりもマイルドで穏やかに思えるのだ。

 もちろん、ライディングモードの選択次第ではシャキッとしたR譲りの走りも味わえるし、これは逆もしかりであるのだが……。

 ただ、同じ設定を選択した際の走行フィーリングが半分くらいずらされているような印象であった。

 ロードを選択すると、ロードとレインの中間くらいという意味であるが、それがこのXRに与えられたキャラクターということだ。 エンジンのフレシキブルさ同様、車体もオールラウンド性に富んでいて、ツーリングシーンだけでなく普段使いにも扱いやすい設定となっている。

 Rに対して一概に乗り心地が良いとはいえないものの、やはりストロークが多い分、しなやかで当たりが優しい。そのハンドリングは、F750GSとF900Rの中間といった印象で、多くのライダーにとって扱いやすさを感じるはずだ。

 高速巡航では防風効果が非常に優れていることを実感。Rに対して静粛性も断然高く、より長時間快適に走行出来るBMWのDNAはしっかり継承されている。

 Fシリーズはこれで4モデルとなった。基本的にはFらしさともいえる間口の広さはどのモデルも継承しているが、Gシリーズが導入されたこともあるのか、もともと持っていた玄人受けする奥深さにさらに磨きがかけられていたことを確認したのである。

2018年にイタリアのコモ湖で開催される「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」で初めて発表されたときのイラスト。F900XRはかなりこのイラストに近い仕上がりだ。

Kシリーズ等に装備されるアダプティブコーナーリングライトをこのクラス初として採用(ベースモデルを除く)。IMUによるバンク角等のセンサーにより、コーナー先の暗闇を効果的に照らす。ライト類は全てLEDを使用し明るさとともに省エネを実現している。
フラットツインのGS等よりは積極的な操作を必要とするが、目を三角にしなくとも結構なペースで走れてしまうDNAはやはりモトラッドのものだ。
「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」で発表されたときの名称は9CENTO(ノーヴェ・ツェント)という独特で未来的なものだった。
ノーヴェ・ツェントには外装に多数のカーボンが用いられていたが、今後F900XRにもそんな仕様がでるのかどうか期待したいところ。

F900R

低く構えたストリートファイター然としたスタイリングは、ヘッドライト点灯時により引き立つ造形。正面からみると左右に張り出したシュラウドが良く目立つ。ガソリンタンク容量は13ℓ。前後の重量配分は50対50のイーブン。

決して戦闘的なポジションではないが、若干前傾気味のスポーツネイキッドスタイル。ハイスピード域でもフロント周りを抑えやすく、Uターンや小回り、取り回しもやりやすい。シートは欧州でのSTDとなる815mmを装着。足つきは悪くないが、ステップとふくらはぎが干渉しがちなところが少し気になった。他に770mm、790mm、835mm、845mm、865mmと計6種類のシートをラインアップしている。

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  1. ミドルクラス初となるアダプティブ・コーナーリング・ライトはオプション設定。
  2. F-GSのエンジンをベースに、アップデート。ピストンは鋳造から鍛造に変更。
  3. メーターは6.5インチTFT液晶を標準装備。イージーな操作性もそのままだ。
  4. アップ&ダウンに作用するオートシフターを装備。シフトのタッチがGSシリーズよりもスムーズに。
  5. マウント部はGSと共通ながら、ショック本体は専用品。プレミアムラインはダイナミックESAを標準装備。
  6. オプションのハイシートはほぼフラットな形状でモタード的ルックスにも。
  7. リア周りはコンパクトだが、ホールド性良好のグラブバーを装備。
  8. ステアリングダンパーを標準装備。その影響か、走り始めの極低速域でのハンドリングに多少重さを感じた。安全性への保険だ。

F900R

エンジン: 水冷4ストローク並列2気筒エンジン
内径×行程: 86×77mm
排気量: 894cc
圧縮比: 13.1
最高出力: 77kW(105ps)/8500rpm
最大トルク: 92N・m/ 6500rpm
ミッション: 6速
サスペンションストローク: F135mm/R142mm
全長×全幅×全高: 2140mm×815mm×1135mm
軸間: 1520mm
シート高: 770mm~
タイヤ: F:120/70 ZR 17 R:180/55 ZR 17
タンク容量: 13ℓ
車両重量: 215kg
価格: 105万7000円~(税込)

F900XR

アッパーカウルのほか、車高もあることから大柄に見えがちなXR。市販バイク初となる軽量プラスチック溶接された燃料タンク(Rも同様)はRから2.5ℓ容量増の15.5ℓでロングライドに対応。前後の重量配分は51対49とRよりもフロント寄り。

Rと比較すると、ハンドルが高めかつワイド。前傾度は緩めでリラックスしたツアラー志向のライポジとなる。ステップ位置も異なり、より低めで膝の曲がりも緩い。カウル&スクリーン形状も良く考慮されており、上半身のみならず膝周りも防風効果あり。写真は欧州でのSTDとなる825mm装着時。775mm、795mm、840mm、845mm、870mmとRと同様、計6種類をラインアップ。体格にあわせチョイス出来るのが嬉しい。

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  1. XRは左右に振り分けた2灯式。アダプティブ・コーナリング・ライトはOP。
  2. BMW定番の6.5インチTFT液晶はXRも同様。
  3. 全くの同ユニットであるが、乗ったフィーリングはこちらのほうがマイルド。ほんの少しだけセッティングが異なるとのこと。
  4. ウィンドプロテクション効果の高いスクリーンは走行中でも2段階のアジャストが可能。
  5. ダイナミックESA装備のモデルはリヤのみがセミアクティブ。
  6. F800Rに比べシート回りのフレーム幅がスリムに。ホールド性や足つきに貢献。
  7. ハンドガードを標準装備。防寒効果も侮れない。
  8. アンダーフロアサイレンサーは刺激的な短さであるが、全体で見ると良くまとまったデザインとなるところが不思議。サウンドもしっかりチューニングされているのがモトラッド流。

F900XR

エンジン: 水冷4ストローク並列2気筒エンジン
内径×行程: 86×77mm
排気量: 894cc
圧縮比: 13.1
最高出力: 77kW(105ps)/8500rpm
最大トルク: 92N・m/ 6500rpm
ミッション: 6速
サスペンションストローク: 170mm/172mm
全長×全幅×全高: 2150mm×860mm×1320mm
軸間: 1530mm
シート高: 775mm~
タイヤ: F:120/70 ZR 17 R:180/55 ZR 17
タンク容量: 15.5ℓ
車両重量: 223kg
価格: 114万8000円~(税込)