Text / BMWBIKES編集部
Photo / Koichi Ohtani
GSと もっと、ずっと、どこまでも
-第4章-
GS乗りなら誰もが憧れる
インターナショナルGSトロフィー。
その国内予選が絶景の広がる志賀高原の
スキー場を舞台に繰り広げられた。
果たして栄光を手にした5名のライダーは!?
決勝の競技では、一人のトライが終わると、他の競技者が駆け寄り労いと励ましの声をかけるシーンも。そこにはすでに年齢や性別を超えた絆が生まれていた。
日が西に傾きかけて来たころに全員の試技が終了。見事予選を通過したのは舟橋理人氏、薮田真吾氏、中澤聡氏の男性3名とYUMI氏、水谷あい氏の女性2名となった。
男性は本戦出場決定だが、女性はこの後各国の女性選出者とポイントを競った結果、本戦への参加、不参加が決まる。いずれにしても彼らの戦いは、これからが本番だ。
バハやダカールラリーなど海外ラリーや試乗会など、国内外で活躍するモーターサイクルジャーナリスト。自身でもR1200GSA、R1250GSAを乗り継ぐ。
2007年の夏、白馬の現モトラッドデイズの会場で、一つの出発セレモニーが行なわれた。「CROSS THE BORDER TOUR」。
日本海の対岸、ロシア、ウラジオストクからモンゴルのウランバートルまでR1200GSアドベンチャーで走る5000kmのツーリングだ。わずか10日間のその旅はハプニングとドラマの連続だった。旅路は記憶に深く、参加した自分にとっても生涯忘れがたいものになった。
その後、そこに参加した当時のモトラッドジャパンのディレクター、ハイナー・ファウスト氏がドイツに帰任し「あの素晴らしい体験を世界のGSライダーを共有すべし」と2008年に始まったのがインターナショナルGSトロフィーだった。
言葉を換えればGSトロフィーは日本発祥とも言えるし、だからこそチーム・ジャパンは過去全てのGSトロフィーに参加する数少ない国、という伝統がある。
2年に一度、参加できるのは一生涯に1度だけ。しかし参加すれば忘れがたい体験がそこで待っている。そんな素晴らしいトロフィーは2020年にニュージーランドで開催されたオセアニア大会で7回目を数えた。
2016年から国内選考会のお手伝いをしてきた自分は、2008年のチュニジア大会に続きメディアとしてニュージーランドに同行。最新のトロフィーを見聞し、多くのことを吸収した。
規模、オーガナイズともに進化したそれは、しかしCROSS THE BORDER TOUR同様、忘れ得ぬ体験であり、同時にタフな旅であったことに変わりはなかった。そう、ゲレンデ/シュトラッセを語源とするGS。どんな道も走り進む旅。これぞ真髄だと思う。
NZのダート区間の長い8日間2600km以上を走り、チームジャパンをつぶさに見て思ったこと、それは旅がもたらす感動、旅の生活、海外での生活、疲労、精神的な揺さぶり。多くの中で精度の高い走りが求められる。
そのエッセンスを選考会にも盛り込むと同時に、トロフィーへのエントリーを目的とした以外のGSライダーとも、この体験を共有できるようにするにはどうすればいいのか。1年前からミーティングを重ね進めてきた一つのカタチが今回の最終選考会だった。
ぶっちゃけると、当初「10月半ばまでに最終選考会を終えよ」というGSトロフィーオーガナイズチームが指定した締め切りが、年末まで延期され、COVID19感染症の影響でそれが開催できない国のためにさらに延期されたり、本国からジャッジが来日してファイナルの採点をするという予定も、感染症拡大の影響によりキャンセルされた。
そんな内輪の話はともかく、GSトロフィーの楽しさ、面白さを日本のGSライダーを共有し、行かずとも応援する人の中でも私ごととして盛り上がる。その目標に向けての第一歩だった。次回以降も同じように走りだそうと思っている。
見事、日本代表の座を勝ち取ったのはこの5名。しかし彼らの本番は、まだこれから。約1年後の本戦へ向けトレーニングを重ね、絆を深めなくてはいけない。それまで、読者の皆さんもぜひ彼らを応援してもらいたい。