BMWBIKES vol.87 掲載記事
Text / BMWBIKES編集部
Photo / BMW MOTORRAD
懐古なのか近未来なのか?
Neo-futuristic & Retro modern
Concept R18 & Vision DC Roadster.
1800ccのボクサーを搭載した「R18」は
すでにコンセプトが明かされ
徐々にその姿が見えてきたが
そんな中、突如としてBMWは
電動バイク「Vision DC Roadster」
を発表した。
はたしてこの2台が示すものとは。
前号(vol.86)では日本のビルダー、カスタムワークスZONの「DEPARTED」と、米リベラルサイクルの「BIRDCAGE」と2台の個性的なカスタムバイクを取り上げた。
その時点では、まだこのバイクのベースとなるモデルの詳細は明らかにされておらず、わかっていたのは1800㏄の空油冷フラットツインエンジンを搭載している、ということだけだった。
その後、5月下旬に「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ(Concorso d’Eleganza Villa d’Este)のイベント会場で「R18」(アールエイティーン)としてこのモデルが正式に発表された。
その姿はロー&ロングのいわゆるボバースタイルと呼ばれるものだ。太くてキャスターの寝た倒立フロントフォークに流線形のタンク。そこからリアアクスルに向かって直線的に伸びるカンチレバー式リヤサスペンション。
むき出しのシャフトドライブに240はあろうかというメッツラーの極太タイヤはフェンダーの後ろへ大きく張り出している。
“モーターサイクルはあなたが身に着けることができる最大のアクセサリーです。最速ではなく最大です。” これはデザイン責任者であるエドガーハインリッヒの言葉。デザインにここまでこだわった車両はBMWの歴史上でもなかなかない。
エンジン単体でみてもとにかく有機的で美しい。ポリッシュ仕上げのアルミ製シリンダーヘッドカバー、BMW 2002のツインソレックスキャブレターなど、どこから見ても隙のない仕上がりだ。
全体的にクラシカルな雰囲気が濃いが、ハンドル、ヘッドライト、そしてエンジンの処理など、要所要所で洗練されたモダンなデザインが光り、これまでのBMWのどのカテゴリーにもない、美しさと気品とワイルドさが混在している。
しかしながら、このバイクによってBMWが狙っているマーケットは予想がつく。GSでアドベンチャー部門を席巻し、スーパースポーツではS1000RRを投入。
RnineTでモダンカスタムを押さえ、スクーターも充実。ラグジュアリー路線はいわずもがな。そうなると、BMWにとって最後の攻め処は北米のハーレーダビッドソンが抱えるクルーザーマーケットと見て間違いないだろう。
もちろんまだこのR18はコンセプトモデルであるので市販仕様はどうなるか楽しみだ。
と、そんな折に衝撃的な情報が入った。
「The electrical awakening of the boxer engine.」
「ボクサーエンジンは電動化で目覚める」
こんな文言から始まりそこには「Vision DC Roadster」と銘打たれた電動バイクの姿があった。すでに走行動画もあり、なんと言っても注目は電動なのにまるでボクサーエンジンのように左右に冷却装置が張り出している点だ。
それもそのはずで、このモデルは「もし象徴的なボクサーエンジンを電気モーターとバッテリーに置き換えたら?」というコンセプトで開発されているからだ。
本来エンジンがあるべき場所には縦長のバッテリーが搭載され、それを冷やすための冷却リブを左右に飛び出させる。
これはつまり、BMWのエンジニアであるマックス・フリッツが1923年に開発したR32のボクサーエンジンと同じ思想で「冷却すべきものを最適な気流のある場所に置く」という、BMWならではの伝統の再現なのである。
それに加え、筒状のモーターをバッテリー下部に配置し、駆動用のユニバーサルシャフト(スイングアーム)はモーターに直接連結されている。
もちろん先鋭的なのは駆動部だけでなくフレーム、サスペンション、コックピットなど車体のすべてにおいて煮詰められ、動画からはすでに高次元の走りを実現しているのが明確だ。
水冷が主流の現代で空油冷の大排気量を搭載したR18と、近未来的なDCロードスター。もちろん電動化の波は避けられないわけだが、そこで電動バイクがエンジン並みに走り、安全で楽しいのか。
この先の10年でエンジンから電動に移り変わることは間違いないだろう。我々はその激動を間近に見て、楽しむほかないのだ。