BMWBIKES vol.92 掲載記事
Text / BMWBIKES編集部
Photo / BMW Motorrad
2020年9月中旬。以前から噂されていた「M1000RR」がついにアンヴェール! 一見、S1000RRをベースにした車両に見えるが、細部まで見ていくとまったくの別物であることがうかがえる。その詳細を紹介していこう。
BMWBIKES NEWMODEL
INFORMATION
Pure racing technology
for the highest performance requirements
in motor sports and on the road.
ついにヴェールを脱いだM1000RRは、一見、S1000RRをベースにしたようにも見えるが、細部はかなり違うようだ。本誌の読者ならご存知の方も多いと思うが「M」とは、BMWが長年4輪の市場で培ってきたモータースポーツ志向の高い特別仕様車のみに冠せられるイニシャルである。今のS1000RRには「Mパッケージ」という上級モデルもあるが、それとこれとではまったく意味が違う。
まずこのM1000RRのコンセプトは「サーキットでのタイムを追求しつつも、公道走行も快適に走れるロードゴーイングレーサー」といったもの。
車体の細部を見ていくともっとも目立つのが、ここ数年の流れともいうべきカウルの左右に張り出したウイングレットだ。Mスポーツによって開発されたMウイングレットは200km/h時に7.2kg、300km/h時にはなんと16.3kgものダウンフォースを生み、コーナリングスタビリティを向上。ウイリー抑制効果が高く、エアロダイナミクスにより最高速も落ちないという。
最大トルクは11.5kgm(113Nm)/11000rpmでS1000RRと同じだが、最高出力は212ps(156kW)/14500rpmとなりS1000RR比で5psの向上。レブリミットも15100rpmと500rpmも上乗せされている。
ピストンはMahle製のアルミ鍛造でクロスリブ入り。フリクションロスの低減と軽量化のためにピストンリングは2本。結果ピストン1個あたり12gの軽量化。燃焼室形状も見直され圧縮比は13.3→13.5とハイコンプ化された。さらに吸気ポートも新設計。既存のシフトカム機構と新設計の吸気ファンネルとの組み合わせで、吸気効率と充填効率の最適化が図られている。
ブレーキも「Mブレーキ」という専用パーツを採用。新設計の4ピストンキャリパーは、S1000RRより約60g軽く、レースを想定してリアキャリパーはクイックリリース化。前後ホイールは「Mカーボンホイール」でここでも約1.7kgの軽量化。フロントフォークはインナーチューブ径45mmのマルゾッキ製でアウターチューブはブラックアルマイト仕様。トップブリッジとアンダーブラケットはアルミ削り出しで20g軽量に。こういった血の滲むような削減の結果、装備重量は192kgとなり、S-RRの200kgから実に8kgもの軽量化が図られた。
ライディングモードはレイン、ロード、ダイナミック、レース、レースPro1~3が用意され、IMU(慣性計測装置)は最新の6軸センサーを搭載。そのほか、ウイリー、ヒルスタート、クルーズといった各コントロールとUSBソケット、グリップヒーターなど、サーキットだけでなく、ストリート向けの電子制御が惜しみなく盛り込まれているあたりがBMWらしさだ。
エンジン:水冷4ストロークDOHC並列4気筒
内径×行程:80×49.7mm
排気量:999cc
圧縮比:13.5
最高出力:156kW(212hp)/14500rpm
最大トルク:143N・m/6250rpm
トラクションコントロール:BMW Motorrad DTC
ミッション:6速
サスペンションストローク:F120mm/R117mm
全長×全幅×全高:2165mm×850mm×1180mm
軸間:1457mm
シート高:832mm
キャスター距離(トレール):99.8mm
ステアリングヘッド角度:66.4°
ホイール:M Carbon Wheels
タイヤ:F 120/70 ZR17 R 200/55 ZR 17
タンク容量:16.5ℓ
車両重量:192kg
価格:500万円(税込)